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トップメッセージ

株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役 グループ社長執行役員
神埜 雄一

第三の創業期を迎え、
チームワーク×求心力でより強い企業体への進化を目指す

産業の変化に合わせた集団指導体制構築へ
中期テーマは「フォーカス&シナジー」

このたび㈱セプテーニ・ホールディングスの代表取締役に就任いたしました神埜です。当社の代表取締役の交代は約15年ぶりで、私が4代目になります。当社グループは、取締役会の任意の委員会として、社外取締役を委員長に据え、委員の過半数を社外取締役で構成する指名・報酬諮問委員会を2023年7月に設置しました。指名・報酬諮問委員会で今後の持続的な成長に向けて、今新しい世代への交代を行うべきという考えのもと議論が行われ、代表取締役として選定いただきました。

デジタルマーケティング市場は変化が激しい業界であり、この産業における組織や人材も他業界と比べると非常に若いです。今回の経営体制の刷新により、経営環境の変化に素早く対応し、今後のビジョンの達成を目指し、若い人材が活躍する場を作っていきたいと思います。業界全体を見ても、役員体制を刷新し、若い世代に引き継ぐ動きが目立ちます。インターネット産業の黎明期と現在を比べると、インターネットが様々な産業を支えるような立ち位置へ変化しています。そのため、求められる経営手法も、先頭に立って0から1を作るリーダーシップ型から、社内外の多くの人と連携する巻き込み型へとシフトしているのだと感じています。

こうした内外の変化を考えると、当社は今、1990年の会社設立時、そして2000年のインターネット広告事業の立ち上げ期に続いて、第三の創業期を迎えたタイミングであると言えます。産業の変化に合わせた集団指導体制の構築と推進によって、グループ一丸となり、持続的成長と企業価値向上を目指していきます。私は新体制におけるはじめの3ヵ年の中期テーマとして、「フォーカス&シナジー」という言葉を掲げました。

さまざまな新しいチャレンジを通じて感じた、「シナジー」の重要性

私は2006年にセプテーニ社に入社しました。当時は、いわゆる「ガラパゴス携帯電話(ガラケー)」が主流の時代で、ガラケー向け広告事業の立ち上げチームに配属されました。事業は市場の拡大とともに急成長し、それに特化したグループ会社も設立しました。これが「新しい領域で事業を拡大させる」という私のセプテーニにおけるキャリアの基礎になったと思います。そこでさらなる事業拡大を目指していましたが、スマートフォン(スマホ)の登場によって状況が一気に暗転しました。スマホ広告へのシフトも試みましたが上手くいかず、結局、ガラケー向け広告事業からの撤退と、所属会社の解散が決まりました。

今後のキャリアについて悩んでいたところ、前社長の佐藤から「新しいことをやってほしい」と声をかけられ、セプテーニ社に戻ることになったのですが、そこで任されたのはなんとスマホ広告でした。さすがに「失敗したばかりなのに」と思ったのですが、「グループ会社の全てのアセットとリソースをフル活用して事業を伸ばしてほしい」と言われ、改めてスマホ広告事業を立ち上げ、成功させることができました。この時、より多くの仲間と一緒に情熱を持って取り組むことで、視界が大きく開けた感覚がありました。スマホ広告市場の成長という強い追い風があったことも事実ですが、同じ領域で失敗と成功の両方を経験して学んだのは、周囲を巻き込んで課題に向き合うという「チームワーク」の大切さと、グループが持つアセットやリソースを活用することの重要性です。それが今回、中期テーマに掲げた「シナジー」という言葉に繋がっています。

経営体制の刷新にあたり、グループ執行役員体制においても「世代交代」を意識しながら見直しをかけています。今回、事業を複数の領域に分け、それぞれを管掌するグループ執行役員が任命されています。今後はグループ全体の業績に対して、個社ごとだけではなく領域ごとに目標を定め、領域内でシナジーを起こすことを志向する「領域経営」にシフトしていきます。これにより、例えば、領域ごとに営業体制をまとめ、各社の強みやアセットを共有したうえで、効率的に自分たちの価値を発揮できるようにしていきたいと考えています。

フォーカス&シナジー

今ある事業領域に「フォーカス」し、新事業にグループ全体を巻き込む

当社グループはこれまで「ドメインの拡張」をテーマに、既存事業の隣接領域や飛び地となる新領域において、新しいビジネスに挑戦してきました。今後は、今ある事業領域を深堀していくことが重要だと考えています。

中期テーマの変更に伴い、組織としての動き方も変えていきます。これまでは、素養のある人材を抜擢し、それまで関わっていた領域と大きく異なる飛び地に送り出し、“個の力”で開拓してもらっていました。言うなれば「スタンドアローン×遠心力」で、敢えて厳しい環境に身を置くからこそ、0から1を生み出すエネルギーが生まれる、という考え方でした。一方でこれからは、今あるドメインを成長させること、あるいは今あるドメイン内から新しい事業を生み出すために、より多くの人を巻き込んでいく「チームワーク×求心力」が重要だと考えています。それを表現したのが「フォーカス」という言葉です。

これまでは、新規事業へのチャレンジは一部の人がしていることだという認識が従業員の中にあったかもしれません。ですが、社内を見ていると、「新しいことをやりたい」と思っている人は、実はとても多いのではないかと感じています。全く新しい事業を0から作るだけでなく、今ある事業の中で新しい施策に取り組むなど、進め方を変えて挑戦するハードルを下げることが、多くの人を巻き込む「求心力」に繋がると考えています。当社はミッションとして「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」を掲げていますが、「チームワーク×求心力」を実践することは、一部ではなく多くの従業員が自身のアントレプレナーシップに気付き、それを発揮するチャンスだと捉えています。

これまで進めてきた人的資本経営を、さらに強化する

ここまで今後の事業成長に向けた道筋についてお話ししてきましたが、当社の事業にとって最も大切な資本が人、従業員です。従業員が活躍するためには、自分の貢献を実感でき、モチベーション高く仕事できる環境作りが欠かせないと考えています。その実現に向けて、以前から取り組んでいるAI(人工知能)を活用した採用・育成に加え、2023年には固定給のベースアップをはじめとする人的資本投資も実施しました。これらの取り組みによって一定の環境整備が進み、近年は若手社員の早期戦力化が進んでいます。当社の360度マルチサーベイを活用した人事評価において、以前は新卒4~5年目が得ていた評価を、現在は2~3年目で得られるようになっているという結果が出ています。

これからさらに多様な人材に活躍してもらうためには、長期的な視点でいえば、活躍できる場、つまり魅力ある事業のバリエーションを増やしていく必要があると考えています。既存の事業で今後も成果を出し続けたいという人もいれば、新しいフィールドで挑戦してみたいという人もいるでしょう。優秀な人が集まる事業を展開し、モチベーション高く働く人を増やすことで、また社内外から多様な人が集まり、新しい事業を展開する……。このような形で人的資本経営をさらに強化し、そこに複数の魅力ある事業を掛け合わせることができれば、当社グループがより強い企業に成長するためのサイクルが回るでしょう。私はこれが第三の創業期における、一番の要だと考えています。

事業の領域区分を見直し、よりお客様のニーズに応えられる体制を構築

今回、事業領域を再編し、デジタルマーケティング事業の中を「マーケティング・コミュニケーション」「ダイレクトビジネス」「データ・ソリューション」の3領域に分けました。主力であるインターネット広告の代理店事業は「マーケティング・コミュニケーション領域」に区分されます。現在のインターネット広告市場は2023年時点で3.3兆円ほどの規模となり、次の数年で4兆円台に達し、成熟期に突入し始めると予測しています。そのうえで将来を見据えると、デジタルマーケティングを主軸としながらも、これに留まらず、お客様に価値貢献できる領域を広げる必要があります。どのような「価値」かといえば、やはりこの数年、電通グループとの協業により進めてきた、インターネット広告やデジタルを活用したソリューションをマス広告と掛け合わせ、お客様の事業を支援することが非常に大事になってきています。今は様々なメディアがあり、ユーザーがメディアと接触するポイントも多様化しています。必要なのは、様々なメディアを横断したトータルでのユーザー体験を設計することです。「部分最適ではなく、事業全体を俯瞰したうえでマーケティングを支援してほしい」というお客様のニーズが高まっており、オンラインのみの提案よりも、オンライン・オフラインの統合提案の方が受注率が高いということも検証が進んできています。

こうした状況において、電通グループのアセット、特にマス広告との連携は我々の強みです。この強みを伸ばしていくことは、2020年代のマーケティング・コミュニケーション領域における1つの重要な方針となります。

フォーカス&シナジー

新しい挑戦、事業展開を見据える
「ダイレクトビジネス」と「データ・ソリューション」

次に「ダイレクトビジネス領域」です。当社は、2022年の電通ダイレクトの子会社化以降、オンライン・オフラインを統合したダイレクトマーケティングを志向しながら、お客様の商品販売を支援してきました。ここで得た「商品を販売するノウハウ」を基に、今後は自分たちが商品を作り、販売するOEM、D2Cビジネスに挑戦していきます。マーケティング支援の場合、広告媒体を仕入れ付加価値を付けて販売するというビジネスの構造上、利益率の向上には限界があります。自ら商品を販売しマーケティングも手掛けることで、利益率を大きく高めることができる上に、より知見やノウハウを深め、当社がマーケティングを支援しているお客様にも積極的に還元することができます。収益性の高いビジネスモデルの創出をこのダイレクトビジネス領域で目指します。

「データ・ソリューション領域」においては、当社グループが抱えるデータエンジニアのリソースを活用し、お客様のソリューション開発を支援する事業の強化に取り組みます。当社グループには国内外に数百人のエンジニアがおり、これまでも社内外のソリューション開発に従事してきました。そこで培ってきた技術力や人材育成・組織運営のノウハウは、よりお客様のソリューション開発支援に活かしていけると考えています。この事業を拡大する場合、カギとなるのがエンジニアの増員ですが、すでに引く手あまたのエンジニア人材を市場から獲得するには多額のコストもかかります。そこで当社は、未経験からエンジニアを育てる教育事業と、育成した人材をエンジニアを求める企業に派遣する人材派遣事業の拡大を考えています。ソリューション開発と人材提供によって企業を支援するとともに、多くのエンジニアの輩出を目指していきます。

また、メディアプラットフォーム事業についても、これまでは個社単独で事業を推進していましたが、デジタルマーケティング事業の知見や人材を活用するなど、事業セグメントを超えたシナジー効果を創出することで、かつての私と同様に、視界が開け、新たなアクションに繋がり、事業成長を加速できると考えています。

「10X」実現に向け、試金石となる3年間

当社のマルチステークホルダーへの提供価値を現在の10倍の水準に高めていく「10X」は長期目標として変わらず掲げていきます。第三創業期となるこれからは、「10X」の実現に向け、複数の強い事業体を持つ企業となることを目指します。そのために、2024年12月期からの3年間は、まず当社の中核事業であるデジタルマーケティング事業に今まで以上にフォーカスし、グループ内でシナジー効果を発揮して、さらに強く、大きい事業へと成長させます。並行して、既存のアセットを活用し、ダイレクトビジネス、データ・ソリューション領域での新規事業創出を進めていきます。

グループ一丸となって、新たな成長を目指すセプテーニグループに、ご期待ください。